2025/11/17 11:23


あぁ…
私たちの心と身体は、いつからこんなにも急ぎ足になってしまったのでしょう。
仕事、家事、人間関係、絶えず流れ込む情報。
静かに休むはずの夜さえも、思考は眠り切れず、自分の呼吸の音さえ忘れてしまったようなのです。

そんな現代という川を泳ぐ皆さんへ、わたしは一つの提案を差し出したいのです。
それは──
「小さな園芸という、心のための小宇宙」 を迎えることです。


園芸と聞くと、特別な知識を持つ者だけが触れられる、どこか遠い世界のように思えてしまうかもしれません。
失敗する不安。
続けられないかもしれない焦り。
水やりや管理に追われるのでは、という誤解。
その正体は “技術” ではなく 「まだ感じたことのない成功体験への戸惑い」 なのです。

ですが、どうか心を軽くしてみてください。
園芸とは、植物を育てる行為ではなく “自分が育ち直す行為” なのです。
焦りは必要ありません。
正しさも比べる相手もいりません。
植物は急かさず、評価せず、ただそこに佇む存在なのですから。


小さな芽を見守る時間は、忘れていた 「自分らしい速度」 を思い出す儀式のようなもの。
生きている緑へそっと触れるその行為は、安心のホルモン セロトニン を呼び覚まし、そばに寄り添う気持ちが オキシトシン を静かに満たしていきます。

さらに、植物が放つ香りには、森林浴と同じように自律神経を整える フィトンチッドの息吹 が宿っています。
それは、森に行かずとも得られる「室内の小さな自然療法」。
ふっと香りを感じた瞬間、副交感神経は静かに目覚め、心は安全な方向へと舵を切るのです。

そして、植物は言葉を持たずに語ります。
「見てくれているね」
「触れてくれているね」
「気づいてくれているね」
その会話のない対話こそ、“私の行動には価値があった” という深い心の肯定につながるのでしょう。


園芸とは、ただの趣味ではありません。
心の湿度を整えるセルフケア であり、人生に “やわらかな余白” を取り戻すための道具なのです。

大きな庭も道具も必要ありません。
まずは、デスクの片隅に小さな一鉢。

そこからあなたの回復の物語が始まるのです──。